俳句の作り方 星流る の俳句
死がちかし星をくぐりて星流る 山口誓子やまぐちせいし
しがちかし ほしをくぐりて ほしながる
星流るが秋の季語。
「夜空に突然現れ、尾を引いてたちまち消える光体。
8月半ばに最も多いと言われる。
宇宙塵が地球の大気中に入り込んで、摩擦によって発光するもの。」
(俳句歳時記 秋 角川書店編)
死がちかし星をくぐりて星流る
死がちかし星をくぐりて星流る
句意を申し上げます。
妻の死期が近くなりました。
死期を報せるように、満天の星空に星がひとつ流れました。
鑑賞してみましょう。
流れ星は最後に光を放ってあえなく消えていく。
人の生涯の終わりも光を放って消えていく定めなんだなあ、
私(作者)はそう思います。
妻山口波津女やまぐちはつじょ は良い妻でした。
私が胸を患って療養しなくてはならないとき、かいがいしく世話をしてくれました。
また、私が俳句を指南すると、波津女はたくさんの句を作りました。
でももう終わりです。
妻の命はそんなに永くありません。
死期が近づいています。
病室の空気が重いので外に出ました。
月は出ていなくとも、星々が輝いてそこそこ明るい。
思い出すのは妻の若かりし頃ばかり。
でももう妻は人生の幕を閉じようとしています。
老いたのです。
最期を報せるように星が流れました。
死がちかし星をくぐりて星流る
